伝熱性の効果
伝熱効果の検証:実験方法
高熱伝導樹脂の伝熱効果を検証するため、従来材(PC+GF30%)と高熱伝導樹脂の伝熱性を実験により比較しました。
- 材料
- PC+GF30wt%材(熱伝導率0.3W/m/K)
- 高熱伝導ポリカーボネート TPN1122
(熱伝導率8.3W/m/K)
- 試験片 100mm×100m×3mmt 平板
- 測定条件 試験片3.2Wの電力をラバーヒーターに与え
試験片の一部を加熱し、赤外放射型温度測 定装置により温度変化を測定しました。

伝熱効果の検証:実験結果

従来材はヒーター接触部のみ温度が上昇し、該部以外には熱は伝わりませんでした。
高熱伝導樹脂はヒーター接触部以外にも熱をよく伝える事を実験にて確認しました。
高熱伝導樹脂を用いれば、下記の効果が得られると考えられます。
- 特定部位の高温化防止
→ ヤケド防止 - 温度分布の均一化
→ 反りの低減 - 高温部分の面積の増加
→ 熱伝達による放熱量の増加
熱伝導率異方性
代表グレード成形プレートの熱伝導率測定値


充填材の配向の影響の為、流動方向の熱伝導率が最も高くなり、厚み方向の熱伝導率はそれほど高い値とはなりません。
肉厚方向の熱伝導率の影響:CAE解析条件
本材料は平面方向に比べて垂直(肉厚)方向の熱伝導率はあまり高い値となりません。
この事が実用上問題となることが懸念されるため、 CAE解析により肉厚方向の熱伝導率が低い異方性樹脂と等方性樹脂の伝熱性を比較しました。
解析ソフト CAEFEMv8.3
- 解析条件
-
- モデル形状
- 100x50x3mmの平板
- 解析モデル
- 6面体二次要素 20x10x3mesh
- 境界条件
- 端部30mmの表面に0.001W/mm2の熱流束を負荷
- 初期温度
- 20℃
- 材料定数
-
- 異方性体 λx= 8W/m/K λy= 8W/m/K
λz=0.4W/m/K(肉厚方向のみ熱伝導率が1/20)
C=0.14J/g/K r=1.2e-3g/mm3 - 等方性体 λx= 8W/m/K λy= 8W/m/K
λz=8W/m/K C=0.14J/g/K r=1.2e-3g/mm3
- 異方性体 λx= 8W/m/K λy= 8W/m/K

肉厚方向の熱伝導率の影響:CAE解析結果

本条件の場合、異方性材料(肉厚方向の熱伝導率が平面方向の1/20 )と等方性材料の温度分布はほぼ等しいという解析結果が得られました。
本材料のように肉厚方向の熱伝導率が低い異方性材料でも実用上問題ないと考えられます。